金魚の塩水浴について知りたい人「金魚の塩水浴について知りたい。金魚が体調をくずしたり、病気になったりしたときは、飼育水に塩を入れて塩水浴をするのが良いって聞いた。どうして体調が悪いときに塩水浴をするといいのか知りたい。また、塩水浴の方法についても知りたいな」
こんな疑問を解決します
この記事の内容
金魚の塩水浴とはなにか、その目的や効果、実施する際の留意点、実施方法について書いています
こんにちは、せいじです。金魚の飼育を10年以上しており、金魚のふるさと、奈良県大和郡山市より、金魚マイスターの認定を受けています。
さて、金魚に元気がないとき、金魚が病気になってしまったとき、一番最初に実施する対策として、塩水浴があるのをご存知ですか?
塩水浴をすることで、金魚の体調が回復し、病気が治る可能性も高くなるんです。ですから、金魚を飼育する上で、塩水浴は欠かせない飼育方法なんですね。
塩を制する人は、金魚飼育を制する、と言われるほど重要だったりします。
というわけで、今回は金魚の塩水浴について解説します。
金魚の塩水浴とは?やり方や効果をわかりやすく解説【完全網羅】を動画で見る
金魚の塩水浴とは?やり方や効果をわかりやすく解説【完全網羅】
では、金魚の塩水浴について見ていきましょう。
塩水浴とは、金魚の飼育水を0.5%の濃度の塩水にして、しばらく金魚を泳がせることを言います。そうすることで、金魚を体調を回復することができるんですね。
本来、淡水魚である金魚ですが、どうして塩水浴をすることで、体調を回復することができるのでしょうか?その秘密が、塩水浴をする目的になります。
塩水浴の目的とは?
塩水浴をする目的は、浸透圧を軽減するためです。浸透圧が、金魚の生活の負担となるからです。
浸透圧とは、生物などにおいて発生する、塩分濃度の低いところから高いところに水分が移動する現象です。
たとえば、きゅうりを塩の中に入れると、シワシワになりますよね。シワシワになる理由は、きゅうりの中にある水分より、外にある塩の方が塩分濃度が高いため、きゅうりの水分が外に出ていってしまうからです。そして、水分の代わりに塩がきゅうりに侵入し、塩漬けになるのです。
この浸透圧が、金魚にどのような作用を起こしているかについて見ていきましょう。
金魚の体液は人間と同じぐらいで、約0.9%の塩分濃度になっています。淡水の塩分濃度はほぼ0%ですから、淡水の中で生活しているときは、浸透圧によって金魚の身体の中に水分がどんどん入ってくることになります。
そのままの状態だと、塩分が抜けて体液の塩分濃度が薄くなり、金魚は死んでしまうことになります。
ですから、金魚は入ってくる水を絶えずえらなどから排出する作業をしています。
これを浸透圧調節と言いますが、浸透圧調節を行うには、それなりの体力を消耗することになります。
健康なうちは問題にならないのですが、体調をくずしたり、病気になったりすると、この浸透圧調節が体調の回復の妨げになるんですね。
そこで用いられるのが塩水浴です。飼育水を0.5%の塩水にすることで、浸透圧を軽減し、金魚の負担を軽くするんですね。(体液が0.9%なので、0.9%の塩水浴がベストに思われますが、実際は0.5%の塩水が金魚にとってもっとも負担が少ないとされています。ここの説明はややこしいので省きます)
浸透圧調節の負担がなくなることで、体力の消耗を防ぐとともに、体調の回復にエネルギーを使うことができるようになるのです。
金魚の塩水浴の効果とは?
浸透圧調節をなくすことで、どのような効果が得られるのか、改めてまとめます。
金魚の塩水浴の効果
- 体調が回復しやすくなる
- 自然治癒力が高まり、病気が治りやすくなる
- 環境に適応しやすくなる
掘り下げていきます。
体調が回復しやすくなる
浸透圧調節から解放された金魚は、体力の消耗を軽減することができます。体力の消耗を軽減することができると、体調の回復に体力を使うことができるんですね。
塩水浴の環境を人間に例えると、体調が悪いときの「暖かくして安静にしておこうね」ということになります。
自然治癒能力が高まり病気が治りやすくなる
金魚が病気になっている場合は、自然治癒力の高まりによって病気が治りやすくなります。温存した体力が、病気を治すために働いてくれるからです。
病気の治療には、それぞれの病気に合わせて薬剤を投与するケースがほとんどですが、塩水浴と組み合わせることによって、治療の効果が高まります。
環境に適応しやすくなる
塩水浴は、環境の変化に適応する際にも効果を発揮します。日常生活の体力の消耗が軽減でき、その分を環境への適応に使うことができるからです。
金魚をお店などで購入し、飼いはじめる際の必須作業としてトリートメントがあります。トリートメントは、お店から家に持ち帰る道中の、体力の消耗から金魚を回復させること、病気の持ち込みを防止すること、そして新しい環境に金魚が早く馴染めるようにするといった効果があります。
環境が変わると、人間もストレスを感じますよね。異なる環境に適応するために体力を消耗するからです。
同じように、金魚も新しい環境になじむのに体力が必要になるんですね。ですから、塩水浴によって生活の負担を軽減してあげることで、環境への適応がしやすくなるのです。
なお、トリートメントについての詳細は、金魚のトリートメントとは?【新しく金魚を飼うときは必須です】をご覧ください。
自然界の魚も塩水浴を実施!
金魚の健康に効果的な塩水浴ですが、実は自然界の魚も行っているのだとか。
自然界の淡水魚は、自分の体調が悪くなると海の方に下っていき、淡水と塩水が混じるところにしばらく身を置くそうです。
そうすることで浸透圧を調整し、体調を整えるんだそうですよ。生き物の本能ってすごいですよね。
フナから改良が加えられて様々な形に発展してきた金魚は、残念ながら自然界で生き延びることはできません。
なので金魚が実際にするかどうかは定かではありませんが、魚にとって塩水浴が効果的な証明ではありますよね。
金魚の塩水浴を実施する際の留意点
次に、塩水浴を実施する際の留意点について見ていきましょう。効果的に塩水浴を実施するために、おさえておきたいことがらをまとめました。
塩水浴をする際の留意点
- 金魚の塩水浴に適した塩とは?
- 塩水浴の期間は?
- 塩水浴をするとバクテリアは死ぬ?
- フィルターの濾材は外した方がいい?
- 塩水浴時にエアレーション必要?
- 塩を入れすぎるとどうなるの?
- 常時塩水浴で飼育するのはダメ?
掘り下げていきます。
金魚の塩水浴に適した塩とは?
金魚の塩水浴に用いる塩は、普通の精製塩で大丈夫です。塩水浴のメインの目的が、金魚の体液と飼育水の塩分濃度を合わせることにあるからです。
ですから、ナトリウム100%の食塩で大丈夫です。
ただし、浸透圧の負担軽減だけでなく、プラスαの効果を得たいのであれば、天然塩を使用するのがいいでしょう。天然塩にはミネラルがふくまれているからです。
ミネラルは、金魚の身体にプラスの効果があるとされているんですね。
いっぽうで、アジシオなど余計な成分が入っているものは避けてください。水質の変化や、汚れにつながる可能性があるからです。
精製塩や天然塩のちがいなどの詳細については、金魚の塩浴の塩はどんな種類を使えばいいの?【失敗しない選び方】をご覧ください。
塩水浴の期間や塩浴を終了する方法は?
塩水浴の期間は特に決まりはありませんが、だいたいの場合、1~2週間程度になります。体調の回復や病気の治療、導入時の負担軽減を目的として行うからです。
いずれも、1~2週間ぐらいで効果が見込めるでしょう。
もう少し柔軟に考えると、病気の治療中であれば、病気が治るまで、金魚に元気がないときに塩水浴を用いるのであれば、元気が出てきた時点でやめて大丈夫です。
塩水浴を終了する際は、一気に真水に戻さないようにしてください。環境の変化が大きすぎて、金魚のストレスが大きくなるからです。
ですから、通常の水換えのように、半分~3分の2程度の水換えを行い、徐々に真水に戻すようにしてください。
塩水浴をするとバクテリアは死ぬ?
ネットで検索すると、塩水浴をすることで、金魚の水質保持に必要なバクテリアが死ぬという意見がありますね。いっぽうで、バクテリアは死なない、という意見もあります。
どちらが正しいのでしょうか。
私の経験上では、塩水浴によってバクテリアへの影響は0ではないかもしれませんが、水が極端に汚れやすくなるほどのダメージはないというのが結論です。
なぜなら、塩水浴を実施しても、水質が不安定になることはほとんどないからです。ですから、個人的にはそこまで神経質になる必要はないと思いますね。
フィルタ―の濾材は外した方がいい?
塩水浴をする際は、フィルターの濾材を外した方がいいとの意見もあります。こちらも、生物濾過に必要なバクテリアが、塩水浴によって死んでしまうから、という理由です。
前述したように、塩水浴による影響はそこまで大きくありません。ですから、私個人はフィルターは外さずに塩水浴を実施しています。
繰り返しになりますが、それで水質が不安定になったことはありません。
塩水浴時のエアレーションは?
塩水浴をすると、水中の溶存酸素量は低下します。つまり、水に溶け込む酸素の量が減るということです。
そして、塩分濃度が高いほど、溶存酸素量は低下するんですね。ですから、酸素をしっかりと供給してあげる必要があります。
とはいえ、塩水浴程度の塩分濃度であれば、上部フィルターや外掛けフィルタ―だけで十分酸素は供給されるので、わざわざエアレーションをする必要はないでしょう。
過密飼育の状態で、塩水浴をした際に金魚が鼻上げをするようであれば、エアレーションを設置してあげてください。
塩水浴で塩を入れすぎるとどうなるの?
塩水浴で塩を入れすぎると、金魚に有害となります。なぜなら、淡水のときとは逆に、金魚の身体から水が出ていくことになるからです。
金魚は水を排出するのではなく、体内に水を取り込む作業をしなければならなくなります。しかし、金魚は水を取り込む作業が得意ではありません。
ですから、極端にいうと塩漬けになって死んでしまうことになるのです。
塩の濃度は基本的に0.5%程度にとどめておいてください。
常時塩水浴で生活するとどうなるの?
塩水浴の効果を考えると、常時塩水浴で飼育すれば、金魚の体調不良や病気を予防できるのでは?と思いませんか?
実はその通りで、塩水浴は金魚の負担を常に軽減できるため、病気予防になります。そして、実際に常時塩水で飼育されている人もいます。
病気知らずで万々歳じゃないか、と言いたいところですが、次のようなデメリットも発生します。
デメリット
- 金魚の身体を守っている膜が薄くなり、体質が弱くなる
- 病気を治す際の手段がひとつ減る
金魚の身体の表面は、薄い膜で覆われています。金魚の身体を菌や寄生虫などから守ったり、浸透圧調節の負担を軽減するためです。
しかし、常時塩水浴をしていると、浸透圧調節をする必要がなくなるため、膜が退化して薄くなってしまいます。
つまり、抵抗力の弱い金魚になってしまうということです。
また、塩水浴をしているからと言って金魚が絶対に病気にならないわけではありません。
水の汚れや水温の変化などによって抵抗力が弱まり、病気になってしまうこともあり得ます。
真水で飼育していて病気になった場合、薬浴とともに塩水浴をすることによって、治療の効果を高めることができます。
しかし、普段から塩水浴をしていると、病気の際にさらに自然治癒力を上げる方法がないため、病気を治療する手段がひとつ減ることになります。
金魚の塩水浴のやり方
最後に、金魚の塩水浴のやり方について書いていきます。まとめると次のようになります。
塩水浴をする際の手順
- 水換えをする
- 塩を少しずつ投入する
水換えをする
塩水浴をする前に、まずは半分~3分の2程度の水換えをしてください。水をきれいにしてから塩水浴をする方が効率がいいからです。
水が汚れた状態で塩水浴を始めると、途中で水換えをする必要が出てきます。その際に塩を追加せねばならず、手間が増えます。
水換えをしてから塩水浴をすれば、1週間以上継続することができます。
少しずつ塩を溶かしていく
水換えのときに、新水に塩を溶かして入れるのはやめてください。なぜなら、真水からいきなり0.5%の塩水になることは、金魚にとって負担になるからです。
ですから、水換えをしてから、溶かさない状態で塩を投入してください。
塩をそのまま入れることで、飼育水の中で塩が徐々に溶け、金魚に負担なく塩水を作ることができます。
塩は水槽の水が0.5%になる量を投入します。
60cmの水槽なら約60ℓの水があるので、投入する塩の量は約300gになります。初めて入れる方は、量の多さにびっくりするかもしれません。
ですが、金魚が死ぬことはないので大丈夫です。
実際の塩の量を画像で見たい方は、金魚の塩浴の作り方をわかりやすく解説【最初は塩の量にビビります】をご覧ください。
金魚の塩水浴とは?やり方や効果をわかりやすく解説【完全網羅】:まとめ
金魚を長生きさせるために不可欠な、塩水浴について解説しました。
この記事をまとめます。
この記事のまとめ
- 飼育水を塩水にすることで、体調の回復、病気の治癒が見込める
- 濃度は0.5%
- 期間は1~2週間が目途
- 塩は天然塩が最適、でも精製塩でも効果あり
- 投入する際は、水に溶かさずに入れる
- バクテリアへのダメージは少ない
- フィルタ―の濾材を外さなくても大丈夫
- フィルターがあればエアレーションは基本なしでOK
- 真水に戻す際は、定期の水換えで徐々に戻す
というわけで、今回はこの辺で終わりにしたいと思います。最後まで読んでいただき、ありがとうございます。